クラウド 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

AWS re:Invent 2018 re:Capに行ってきた!今年注目の発表は?(後編)

2019年3月8日掲載

シイノキです。年が明けたと思ったら、2月でした。節分のタイミングでお雛さまを出したのに、だれも褒めてくれないので、自分で自分を褒めるしかない今日この頃。
さて、気を取り直して、AWS re:Invent 2018ダイジェストのダイジェストをお届けするレポートコラム、後編をお届けします。今回はストレージとデータベースの新サービスを取り上げますが、その前にre:Capの基調講演でも「特に注目」と言われた驚きの発表から紹介したいと思います。

人工衛星に、オンプレミス用ハードウェア! AWSはどこまでやるの?

まずはメディア向けブリーフィングで発表されたという「AWS Ground Station」。人工衛星管理の地上局マネージドサービスです。人工衛星からアナログのダウンリンクを受け取ってデジタルに変換するサービスで、人工衛星の地上側設備のコスト削減になるのだそう。そのニーズ、世界でどれだけあるんですかね………と遠い目をするしかありませんが、月を目指すレースがおこなわれる今の時代、人工衛星が身近になる日だって来るのかもしれません。ちなみに、利用するにはNORAD IDという人工衛星のIDが必要になるそうなので、ご利用の際はご注意ください☆

もうひとつ驚いたのが「AWS Outposts」、なんとオンプレミスで使えるハードウェアです。これがあれば、オンプレミスのデータセンタにAWS環境が作れちゃう………って、ちょっとなにを言ってるのかわかりません。AWSなのに………ハードウェアを提供するって………と戸惑いを隠せませんが、どうやらAWS環境と同じソフトウェア、ハードウェアを提供し、オンプレミスのデータセンタに持ち込むことで、AWSとのハイブリッド環境をより効率化できる、ということらしい。当然ながら、「インフラ」にはグローバルネットワークやアベイラビリティゾーンなども含まれますから、AWSとまったく同じ環境を再現できるワケではなく、「目指すべき終着点はクラウドだけど、移行の通過点としてハイブリッドクラウドはなくならないし、それならこれ使うといいよ」ということのようです。なんたるパワープレイ。

Windows環境に朗報?ストレージサービスに新ラインナップ

AWS Ground StationやAWS Outpostsのような華やかさはないけれども、地味ながら実践的なジャンルがストレージです。今回の発表では「Amazon S3 Glacier Deep Archive」と「Amazon FSx for Windows File Server」という2種類が紹介されました。

「Amazon S3 Glacier Deep Archive」はとにかく安く・長期的に保存できるストレージ。これまでも「Amazon Glacier」という安価に使えてアーカイブに適したストレージサービスがありましたが、それよりさらにお安いとのこと。ただし、データの取り出しには12時間かかります(Amazon Glacierでは3時間)。すぐには使わないけどとっておかなきゃいけない監査ログなどの保存先にどうぞ、ということでした。

「Amazon FSx for Windows File Server」は複数のWindowsサーバにマウントできるストレージです。複数のサーバに紐づけて共有ストレージとして使える、というとAWS Summit Tokyo 2018で東京リージョン対応が発表された「Amazon EFS」がありますが、こちらはLinux環境のみ対応であり、Windows環境で利用する場合はやはり共有ストレージを作り込む必要がありました。

それに対して、「Amazon FSx for Windows File Server」はその名のとおりWindows環境に対応しています。AWSはなんとなくWindowsを使うイメージはなかったのですが、実は「Windows Serverが稼働するIaaS」のなかでAWSの割合はかなり高いのだそう。ちょうどWindows Server 2008の延長サポート終了でいろいろと騒がしい昨今ですが、Windows ServerのAWS移行のニーズも高まっているのかもしれません。ちなみに、ソニーネットワークコミュニケーションズもWindows ServerのAWS移行支援サービスを提供していますので、気になる方はぜひお問い合わせを!

おまけとして、ストレージサービスではありませんが、SFTPのマネジメントサービス「AWS Transfer for SFTP」もかなり便利そうです。S3にデータを直接UPして使っている場合、これまではEC2上にSFTPサーバを構築する必要がありましたが、このサービスを使うことで、標準のSFTPクライアントから直接UPできるようになるのだそう。まったくAWSは、こういう「今まで自分たちでなんとかしていた」系のものまで次々にサービス化してきますよね。

あのDBベンダにケンカ売っただけじゃない。AWSはデータレイクを目指す

さて、DBまわりの話題となると、AWSのCEOがあのDBベンダに言及したとかなんとか、そんな話も聞こえてきますが、どちらかというともっと違った発表がメインのようです。

今回のテーマは「データレイク」。これまでデータの保管先としてはDBやDWHを使うのが一般的でしたが、安価なストレージ(S3ですね)に保存して、必要なときだけ高価なインスタンスに移動しましょう、というコンセプトだそうです。でもこれ「言うのは簡単だけど、だれがやるのさ」っていうパターンでした。それを、サポートするのが今回発表された「Amazon Lake Formation」。S3のほか、ストレージデータに対してSQLを発行できる「Amazon Athena」、サーバレスでETL(データの抽出・変換・DWHなどへのロード)を実行できる「AWS Glue」の連携をまとめてテンプレートとして提供し、自動でデータレイク環境を構築します。大量のデータを収集することも可能になった今、とにかくデータをストレージに突っ込んでおいて、あとから活用法を模索する、という手法もどんどん増えていくはず。そのためにもこういった環境を手軽に構築できるのは、かなり価値があるのではないかと思うのです。

一方で、DBについてもさまざまな発表がありました。Amazon DynamoDBやAmazon Auroraの機能強化にはかなり注力しているようで、「もうOSSのDBでも問題ないから!まだ商用じゃないとダメとか言ってるの?」という強いメッセージを感じます。そのほかで今回おもしろかったのは「Amazon Timestream」という時系列データに特化したDB。IoTなどの時系列データを貯めて、そして安価かつ高速に分析できることが特長です。時系列データは一般的なRDBだとタイムスタンプをつけてためておくのは簡単でも、取り出すのがなかなか厄介だったのですが、そこをクリア。「いつからいつまでのデータを取り出す」といった処理に最適化されているようです。

現地にいったエンジニアが注目した新サービスは?

最後になりましたが、ラスベガスまで足を運んだソニーネットワークコミュニケーションズのエンジニアの方にもお話を伺いました。まずはクラウドポータル開発者インタビューでもお世話になった平山さん。過去何度か現地で参加していましたが、今回はいかがでしたか?

「イベントや会場の規模が年々大きくなっていて本当に圧倒されました。独自サービス機能の追加だけでなく、ブロックチェーンやロボット開発などのトレンド技術まですべて飲み込んだ巨大なインフラ基盤ができあがっているのを感じます。おもしろかったのは、自動運転開発を学習させるラジコン『AWS DeepRacer』。自動運転という1人のエンジニアでは実現できない技術を、遊び心も加えてAWSエンジニアに開放する戦略には驚きました。今回はサーバレスやAI関連のセッションを中心に回っていて、ここからどうクラウドポータルの機能や新サービスにつなげられるかを考えるのが楽しみです」

続いて「今年が2回目の参加」という東川さんは、サーバレスや機械学習周りに注目したそうです。
「トレンドに乗った新サービスもありましたが、個人的にはこれまでのサービスで足りなかった部分を強化してきたなと感じました。サーバレスでもLambdaがRubyやCOBOLに対応したほか、Lambdaなどで構築した処理をワークフロー化して管理できるAWS Step Functionsがほかのサービスにも対応して、かなり進化しています。機械学習も、AWSが用意したアルゴリズムでカバーしきれない部分をサードパーティがマーケットプレイスで提供できるようになったので、カバーできる範囲がとても大きくなるはずです。前回のre:Inventは機械学習などの目玉機能が中心でしたが、今回は目玉機能と既存機能拡充がバランスよくリリースされた印象があります。LambdaやStep Functionsはクラウドポータルでも活用しているので、カスタマイズAPIの機能強化などできることはたくさん出てきそうです。楽しみですね」

最後に、今年初参加された本間さん。やはりその規模の大きさに驚いたそう。「6つの会場をまたがる規模と、参加者の熱気に驚かされました。しかもAWS DeepRacerの発表翌日にはレースが開催されるなど、1つひとつのイベントにエンタテイメント性があり、展開のスピード感に圧倒されました。今回はネットワークやWindows系サービスのセッションを中心に回ったのですが、なかでも注目しているのが『AWS Transit Gateway』ですね。AWSのネットワークをよりフレキシブルに拡張するサービスで、AWS Direct Connectとの連携も実装される予定なので、うちのネットワーク関連サービスにも活かせるのではないかと期待しています」

………と、皆さんそれぞれre:Invent 2018を満喫されてきた様子。それぞれ収穫も多かったようなので、マネージドクラウド with AWSの新機能にも期待したいと思います!
以上、シイノキでした。

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